大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「はっ」


圧迫されていた胃のあたりを解放されて、思わず声が漏れる。

このまま着替えを手伝わせてしまうのかしらと体を硬くしていると、「とわ」と彼が再び女中を呼ぶので安堵した。


「三谷の父上に挨拶をしてくる。郁子は髪も解いてもらって、眠れるなら少し寝なさい。昨晩も身じろぎばかりしていた。眠っていないんだろう?」


緊張で眠れなかったのに、気づいていたの?

敏正さんの部屋は、箪笥の置いてある部屋を挟んだ向こう側。

夜の帳が下りて静寂が訪れると、足音などの物音がよく聞こえる。
それはおそらく敏正さんも同じだろう。


「それにお気づきだということは、敏正さんも睡眠不足でいらっしゃいますね」


指摘すれば、彼は口の端を上げる。


「その通りだ。郁子の花嫁姿が見られると思うとソワソワして眠れなかったんだ」


あれっ、私の花嫁姿を楽しみにしていたの? 
私は祝言を滞りなく行えるか緊張していたのに? 
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