大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
思わず声を漏らすと、彼のまぶたがゆっくり開いていくので、慌てて長襦袢の襟元を手繰り寄せて整える。


「あぁ、郁子の寝顔を見ていたら俺まで寝てしまった」


寝顔を見ていた? 
そんな無防備な姿を見られたの?


「郁子、体調はどう? 唇の色はいいようだけど」


彼は妙に色香漂う声でささやき、人差し指で私の唇をなぞる。

その様子があまりにも艶っぽくて、鼓動が勢いを速めた。


「だ、大丈夫です」


こんなときにどうしたらいいのかわからず、ただ固まってなすがまま。

彼は片ひじをついて私の顔を覗き込んでくる。
至近距離に慣れない私は、目を泳がせた。


「すみません。寝てしまって」

「寝ろと言ったのは俺だぞ。今晩はここに泊まる? それとも俺たちの家に戻ったほうが落ち着けるかな」


俺たちの家、か。

吉原で偶然拾われて、こんなふうに言われる日が来るとは思ってもいなかったので感慨深い。


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