大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
たしかに、隣でステーキを食べていたような。


「でしたら、あんぱんを買ってください」


そう伝えると、彼はきょとんとした顔をしたあと、体を震わせ始める。


「あはははは。あんぱんか。いいぞ。いくつでも買ってやる」

「大食いみたいに言わないでください。ひとつでいいです」


吉原の大門前から連れ去られたときに食べたあんぱんは、どんなステーキよりおいしかった。

彼は運転手に指示を出し、途中の店であんぱんを大量に購入させると私に持たせる。


「まだ温かい……」
「遠慮せず、かじってもいいぞ」
「それでは、敏正さんも」


車の中でなんてはしたないかもしれないと頭をよぎったけれど、もうすでに人力車で食べている。
今さらだ。


私が紙袋からひとつ取り出して彼に渡すと「俺も?」と目を丸くしているが、「はい」と笑顔でうなずく。


「そうだな。夫婦なのだから一緒がいいな」


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