大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
住み込みではない春江さんは、いつも布団を敷いたあとに近くの長屋に帰っていく。

敏正さんに続いて湯浴みをしたあと二階に向かったが、私の部屋に布団が敷いていない。


「忘れたのかしら」


いつも自分でやるからいいと断ってもやらせてくれないのに。

首をひねりつつ押し入れを開けてみたが、ここにも布団がない。


「郁子」


敏正さんが私を呼ぶ声が聞こえたので、自室を出て彼の部屋の前で膝をつき障子越しに声をかける。


「なんでしょうか」
「入っておいで」


言われるままに障子を開けると……。


「あっ」


ぴったりとくっつくように布団が二組敷いてある。


「春江が気を使ったようだ。おいで」


机の前にあぐらをかいていた敏正さんは私を手招きする。

けれども、息をするのも苦しいくらいに鼓動が速まっている私は少しも動けなかった。

すると、それを見抜いているかのような彼は自分から近寄ってくる。


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