大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
そして自分も隣に寝そべり、そっと私を抱き寄せた。


「そんなに固くなられると困るな。いつもの勢いはどこにいった?」
「す、すみません」


謝ると彼はクスクス笑っている。


「心配するな。郁子が嫌がることはしない」
「えっ?」
「もしかして、これも嫌か?」


彼は腕の力を緩めて私の顔を覗き込んでくる。

これって、抱きしめられること?

たまらなく恥ずかしいのに、少しも嫌ではない。
彼に触れられると息が苦しいのに、離れたくないほど心地いいのだ。


「いえ」


正直に答えると「よかった」と微笑まれて、いっそう恥ずかしくなった。

再び私を腕の中に引き寄せた敏正さんは、話しだす。


「あの日、吉原でお前に会えてよかった」
「私に?」
「そう。もうずっと俺だけのものだぞ」


俺だけのって……。

強い独占欲にたじたじになりながらも、私はうなずいた。


「わ、私も敏正さんに出会えて幸せです。これからどうぞよろしくお願いします」
「うん」
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