大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
返事をした彼がなんと私の額に唇を押しつけてくるので、ますます棒のように固まってしまう。


「明日は俺も休みだ。なにも気にせず好きなだけ眠って。俺もそうする」
「はい」


彼は私を抱きしめたまま、まぶたを下ろした。

このまま眠るの?

新婚初夜の今晩、こうして同じ布団に入ったら、体を交えるものだと思っていたのに拍子抜けだった。

けれども、疲れきっていた私もすぐに眠りに落ちていった。



翌朝目覚めたのは、もう空が明るくなっていた八時過ぎ。

わずかに開いていた窓からかすかにキンモクセイの香りが漂ってくる。


私に腕枕をしたまま目を閉じている敏正さんの顔をまじまじと見つめた。

男性なのに絹のように艶のある肌。
長いまつ毛に高い鼻。形の整った唇が、昨日私の額に触れたと思えば照れくさくてたまらない。


「旦那さま……」


起きているときは恥ずかしくて口に出せない言葉をつぶやく。

すると、首の下にあった腕が私をグイッと引き寄せた。
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