大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「打掛姿の郁子、本当にきれいだったわ。旦那さまはあの津田紡績の嫡男だし美形だし……言うことないわね」


彼女にはこの結婚が政略的なものだとは明かしていない。

たとえ政略結婚でも、幸福感を感じている私は笑顔でうなずいた。


「お優しいの。今日も、女中のために和菓子を買ってきてって」
「まあ! いいわね。私の旦那さまは……」


富子の表情が曇るので首を傾げる。

大手銀行に勤める男爵と結婚してもう一年ほどは経つと思うけど、うまくいっていないの?

彼女の家も男爵家で、身分の違いもなく価値観が合うと、結婚直後は笑顔で話していたのに。


「どうしたの?」

「それが、浅草の凌雲閣(りょううんかく)に足しげく通うようになって……」


凌雲閣といえば眺望用の十二階建てのモダンな建物だけど、気に入ったのかしら?


「高いところがお好きなの?」
「違うわよ! あそこは私娼(ししょう)がたくさんいるの」
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