大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
人がにぎわうこの界隈は一等地で土地代も高く、かなり思いきった出資だったが、それ以上に建築費がかさんで借金まみれとなった。

だまされた父が悪いのだけど。


まだ建築途中の現場に近づいていくと、一橋さんらしき姿を見かけてあとを追った。

彼は、工事関係者と思しき男性と難しい顔をして話し込んでいて、とても近づける雰囲気ではない。

ビルヂングはまだ半分もできておらず、敏正さんに仲介人の詐欺行為を指摘されなければどれだけ借金が膨らんだかわからない。

私が妓楼で働くくらいでは済まず、もしかしたら泰子まで……と考えたら身の毛もよだつ。

改めて敏正さんに救われたことを感謝した。


「お世話になります」


私は一橋さんのうしろ姿に頭を下げてから、邪魔にならないようにそのまま踵を返した。



その日、敏正さんが帰宅したのは二十一時。


「なんだ、大福しか買ってこなかったのか?」

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