大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
そう漏らすと、敏正さんは手の力を緩めて私を解放したかと思うと、今度は両手で頬を包み込んだ。

否応なしに視線が絡まり、激しくなる鼓動が彼に聞こえないか心配になる。


「郁子は自分をわかっていない」
「えっ?」


なぜか少し怒気を含んだような声が、私の緊張を誘う。


「こんなに魅力的なのだから、下心のある男はいくらでも寄ってくる。どこにも触れられてはいないか?」


魅力的? 
それならどうして抱いてくださらないの? 
仕事のために結婚した、ただの駒だから? 

もしそうなら、勘違いするから優しくしないで!


富子の旦那さまの話を聞いたせいか、そんな思いが湧き起こったものの、口にする勇気はない。


「はい」
「よかった。郁子にこうして触れていいのは俺だけだ。危ないから、人気(ひとけ)のない場所にひとりで行ってはいけないよ」


触れるって……。
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