大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
額に唇を押しつけられたことはあれど、口づけすらしていないのよ? 

敏正さんの言動がちぐはぐで、余計に不安が募る。


「承知しました」


私は複雑な気持ちでうなずいた。



湯浴みのあとは、いつも彼の部屋で抱きしめられながら眠る。

今日も同じ布団に入ると、すぐに腕を回されて引き寄せられた。


「こうしていると落ち着く」
「本当ですか?」
「あぁ。郁子は窮屈か?」


尋ねられて腕の中で首を横に振る。
そしてこっそり彼の浴衣の襟元を強く握りしめた。


敏正さんだって、触れていいのは私だけです。

そう叫びたいのにできない。
面倒な女だと思われて、離縁されたら……と思うと怖い。


私、こんなに敏正さんに心惹かれているんだわ。

結婚を言いだされたときは目を丸くしたし、よく知らない彼と夫婦の契りを交わすことに不安が募った。

けれども今は、彼の妻でなくなるのが怖くてたまらない。


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