大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
本所錦糸町(きんしちょう)にある津田紡績本社は、あの広い津田家本邸が五つ六つは軽く入りそうなほどの敷地面積を有していて、腰が抜けそうになった。

少し離れた場所にある工場は、この二十倍以上あるという。


一橋さんに案内された私は、経理部門に早速向かった。


「皆さん、お話ししていた津田郁子さんです。どうぞよろしく」
「よろしくお願いします」


一橋さんの紹介に合わせて首を垂れて挨拶するも、なんの反応もない。

ここには七人いるが女性はひとりだけ。
あとの六人は男性だ。

やはり算術が得意な女性は少ないらしい。


「一橋さん、本当に大丈夫なんですか? ここはお金持ちのお嬢さんが遊びに来るところではありません」


ピシャリと言い放ったのは、ひとりだけいる女性社員。

私より六、七歳ほどは年上に見え、きっちり結った髪にかんざしが一本。
着物の上に外套のような羽織を着ている。

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