大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
この羽織は会社から支給される制服のようなもので、着物の袖が邪魔にならないように作られている。
私も先ほど預かった。


「まあまあ。彼女はただのお嬢さんではありませんから。一緒に働けばわかりますよ」


一橋さんがかばってくれるのがうれしかった。
彼の言葉が嘘にならないように頑張らなければ。


「算術はまだ勉強中ですが、一生懸命やらせていただきます。どうかご指導ください」


深々と頭を下げてから体を起こすと、皆あんぐりと口を開けている。


「将来の社長の奥さんからお願いされてる」


手前にいる背広姿の男性がぼそりとつぶやいた。

あれっ、だめなのかしら。


「そういう方なんですよ。だから遠慮なく。郁子さん、私はこれで」
「ありがとうございました」


一橋さんを見送ると、先ほどの女性が近づいてきた。


「初めまして、松尾(まつお)です。そういうことなら遠慮しないわ。よろしく」


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