大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
私は箪笥から藍鉄(あいてつ)色の渋い浴衣を取り出して渡し、先に一階に下りた。

食事の支度と、お風呂の準備まで整えた春江さんは帰っていく。


「今日もありがとうございました」

「こちら、ありがたくちょうだいしますね。楽しみです」


彼女が掲げたのは、会社の帰りに揚げ物屋で購入してきたコロッケだ。

今晩のおかずにもなっているが、彼女はこれが好物なのだ。


「はい。それではおやすみなさい」


挨拶をして戻ると敏正さんがすでに奥座敷に下りてきていた。


「お待たせしてすみません」
「コロッケか。春江が喜んだな」
「はい。三つ持って帰っていただきました」


春江さんは使用人とはいえ敏正さんは家族のように接していて、いつも彼女へのお土産も忘れない。だから私も必ずそうしている。


「それは食べ過ぎだろう」


彼はクスッと笑って、「いただきます」と手を合わせた。


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