大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
彼は眉根を寄せて言いよどむので、私から口を開く。


「手抜き工事ですね」

「聞いたのか。そうだ。それが発覚して、信頼のおける建築会社に建設を依頼し直した。これまでの建築会社はもう一度やらせてくれと申し入れてきたが、自業自得。信頼を裏切った相手は容赦なく切る」


敏正さんの目が鋭い。

春江さんが以前、『時には手段選ばす目的を達成し、時には冷酷に突き放す』と話していたが、こういうことなのだと肌で感じる。

私の知っている彼とは違うものの、こうした厳しさがなければあれほど大きな会社を動かすなんて不可能なのだろう。


「父ではなにもできませんでした。本当にありがとうございます」


私は畳に手をつき頭を下げた。


「郁子。そんな礼はいらない。俺は父上のためというよりは郁子のために動いたのだから。妻を守るのは夫の仕事だ」


温かい言葉に、鼻の奥がツンとする。

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