大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
日付を確認すると、彼が午前零時を回った頃に帰ってきた日の領収書だとわかった。

たちまち心臓がドクンドクンと大きな音を立て始める。


「あぁ、これは私がやるわ」


私の声に気づいた松尾さんが、おそらく気を使ったのだろう。
さりげなくその領収書を抜き取っていく。

もうすでに帳簿に記入済みということは、花街の費用は接待なのだろう。

私娼を買ったのもきっと得意先の人だ。敏正さんじゃない。

私は自分に言い聞かせて、次の書類を手にそろばんを動かし始めた。



その日、敏正さんが帰宅したのは十九時少し前。

玄関で笑顔を作り、「おかえりなさいませ」と頭を下げて出迎えたけれど、顔が引きつっていないか心配になる。


「ただいま。いい匂いだね。これはカレーライス?」
「はい。カレー粉が手に入ったんです」


今やカレーライス店は街にたくさんあり、大盛況。
最近は通信販売でカレー粉を売っていると知り買ってみた。

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