大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「それは楽しみだ」
二階に上がっていく彼を追いかける。
「今日は忙しかった?」
「いつも通り、でしょうか」
会社に行った日はもっとあれこれ会話を交わすのに、あの領収書が引っかかって言葉が続かない。
「そうか。俺はずっと出たままで、夕方ようやく会社に顔を出せて疲れたよ」
彼は部屋に入ると、脱いだ背広を渡してくる。
それを受け取りながら「お疲れさまです」と口角を上げた。
「郁子」
「はい」
「元気ない?」
彼は鋭い。
けれども、花街の領収書を見ただけでヤキモキしているなんて情けなくて、とても告白できない。
「元気ですよ。ちょっとお腹が空いてるだけです」
「あはは。それではすぐに飯にしよう」
よかった。なんとかごまかせた。
楽しそうに肩を振るわせる彼が、平気な顔をして他の女性を抱いているとは思いたくなかった。