大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「ゆっくり眠りなさい。仕事もしばらく休んでいいから」


彼は私の頭を優しく撫でてから出ていった。


その手で、菊乃さんに触れたの? 
私のことは抱こうとすらしないのに? 
彼女が命をかけてでも足抜けしようとするほど、強い結びつきがあるんでしょう?


次から次へと苦しい思いが飛び出してきて、閉じた目から涙があふれだし止まらなくなる。


それからしばらくして静寂が訪れた。

私は布団を抜け出し、窓から庭を眺めた。
ハナミズキは赤い実がなり、葉が美しく紅葉している。

この木に花が咲いていた頃、初めてこのお屋敷に足を踏み入れたんだなと懐かしく感じる。

あれから怒涛の展開だった。
敏正さんに政略結婚を申し込まれ、あれよと言う間に妻の座に収まった。

思えば、私は彼をまだよく知らない。

菊乃さんに本気の恋をしているが吉原の遊女では叶わず、仕事のために私を娶ったのだろうか。

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