大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
やはり彼は優しい人だ。
喜んでいる振りまでしてくれる。
私からの贈り物なんて、本当はいらないと思っているくせに。
もう、だめだ。
心に少しも余裕がなくて、涙を我慢できない。
「郁子? どうしたんだ?」
はらはらとあふれだした涙を止められないでいると、すぐに気づかれてしまった。
彼は私の両肩に手を置き、顔を覗き込んでくる。
「なんでもありません」
もう行って。
このままでは、とんでもないことを口にしそうだ。
「そんなわけがないだろう? 体調が悪い――」
「違います」
心が痛いの。
きっぱり否定すると、彼は私を抱き寄せる。
「それなら、どうした? ここ数日落ち込んでいたけど……。はっ」
敏正さんは思い当たったというような声をあげて、体を少し離す。
そして私の頬に伝う涙を大きな手で拭ってから、視線を絡ませてきた。
「まさか、吉原のことを気にしているのか?」