大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「菊乃には何度も助けてもらった。同じ妓楼の別の遊女に入れあげている政府の高官がいてね。俺はその人の接待で足を運ぶことが多いんだが、目当ての遊女に他の客がついていると、俺が金を出し渋るからと怒りだすんだ」


彼は小さな溜息をついてから続ける。


「しかし、遊女たちは金ではなびかないという誇りを持っている。金で動くとしたら身請けのときだけ。指名した遊女に先客がいる場合、振袖新造という別の遊女が相手をするのがしきたりなのだが、振袖新造は同衾を許されていない。だから余計に怒りが爆発して、その矛先が俺に向く」


なんとわがままな高官なのだろう。


「横柄な振る舞いをする客は嫌われる。だから、その高官も案の定有名な嫌われ者だ。ただ、怒らせてばかりでは俺の顔がない。そういうときは決まって菊乃がなだめて相手をしてくれた。彼女は座敷持ちの遊女でね。高官の相手をする間、俺や孝義さんに自分の部屋を貸してくれたんだ」


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