大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
つまり、菊乃さんは敏正さんではなく、いつもその高官の相手をしていたということ?

自分も吉原に身を沈めようとしていたのに、遊女たちの厳しい現実から目をそらしていたかもしれない。

嫌われ者の客相手でも、みずから進んで肌を重ねなくてはならないつらさを、理解できていなかった。


「バカだな、俺。郁子が不安に思うことくらい、少し気を回せばわかるのに。俺としてはやましいところがひとつもないから説明もしなかったが、きちんと話すべきだった。すまない」


背中に回った手に力がこもる。


「郁子。俺は……お前を愛している。世界でたったひとり、お前だけを」


えっ? 今、なんて?


「この想いは、郁子には迷惑なのではないかとずっと――」

「迷惑なわけがありません」


敏正さんの言葉を遮ると、手の力を緩めて体を離した彼は私に熱い眼差しを注ぐ。


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