大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
今晩も接待だったのではないの?


「今日は菊乃の大切な日なんだ。どうしても行かなければならない理由がある。説明している時間がない。車の中で話すから、暖かい恰好をしておいで」


どうしても行かなければならない理由?

まったく見当がつかないが、私を連れていくと言っているのだから、やはりやましいことはないのだろう。


「承知しました」


私は涙を拭い彼から離れようとした。
けれども腕を引かれて振り向くと、不意に唇が重なり、心臓が跳ねる。


「ネクタイ、うれしいよ。大切にする」
「は、はい」


これが本当の夫婦というものなのかしら。

照れくさくてたまらない一方で、これが夢なら覚めないでほしいと強く願った。



外套を纏った敏正さんは、私の手をしっかりと握り、玄関先で待ち構えていた自動車に近づく。

すると、後部座席に座っていた一橋さんが降りてきて目を丸くした。


「郁子さんも行かれるんですか?」
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