大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「はい。話はあとで。急ぎましょう」
「そうですね」


どうしてそんなに急いでいるのだろう。

一橋さんが助手席に移り、私と敏正さんが後部座席に座ると、運転手が早速自動車を発進させた。


「あの……なにがあるのでしょう?」


状況を理解できない私が口を開くと、敏正さんが話し始めた。


「今日は菊乃を買った男がいてね。身請け話が出ている今、本当なら他の男がひと晩買うなんてことはできないんだが、妓楼の主人に頼み込んだんだ」

「敏正さんが、ですか?」

「そう。その男は吉原が初めてで、間違いなく邪険にされて終わりだからね」


つまり、その男性に橋渡ししたの?


「菊乃は二十一になるのだが、十四のときに貧しい農村から売られてきて、十五で客を取り始めた。器量も申し分なく人当たりもいいことから人気が出て、なじみの客から身請けという話になった」


私より幼い頃から客を取っていたなんて、気の毒でならない。


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