大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「今日、菊乃を買うのは、菊乃の想い人――つまり間夫なのだ」
「それじゃあ……」


敏正さんは、望まぬ身請け話を受けなければならない菊乃さんを不憫に思い、今日の機会をお膳立てしたのだろうか。


「無論、他言無用だ」
「もちろんです」


そのようなことを知られたら、身請けの相手の逆鱗に触れること間違いなしだ。


「その男は、菊乃が売られてから何度も田舎から何時間も歩き通しで吉原に来ていたのだが、男には菊乃を買うだけの金がなく、見世に出ていた彼女が買われるまで何時間でも見ていたそうだ」


目の前で好きな女性が他の男に買われる姿を見ていなければならないなんて、どれだけ切ない話なのだろう。

目頭が熱くなり、唇を噛みしめる。


「しかし菊乃が売れっ子になると見世にも出なくなり、姿を拝むことすらできなくなった。菊乃も男が忘れられなくて、手紙を届けてやるようになったんだ」

「そのようなことが……」


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