大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
けれど、身請けにかかるお金を用意できる者はそうそういない。
「はい」
彼女のこれからが、少しでも希望の灯る道であるように、私には祈ることしかできなかった。
そんな話をしているうちに、あの大門の前に到着して私たちは車を降りた。
「孝義さん、あとはお願いします」
「承知しました。それではのちほど」
一橋さんは私たちから離れていく。
敏正さんは私の手をしっかりと握り、四郎兵衛番所で私のための切符を求めてから吉原の中へと足を進めた。
この切符がないと女は出入りできないのだ。
「はぐれないように気をつけなさい。郁子は美しいから、男から声をかけられそうだ」
「美しくなどございません」
敏正さんにこれほど甘い言葉をささやかれると、恥ずかしさのあまり声が小さくなっていく。
しかし、初めて足を踏み入れた吉原に、緊張していた。