大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
透き通るような白い手をそろえて深々と頭を下げる菊乃さんは、とても二十一には見えない。

お付の新造に促されて部屋の中に入った私たちは、菊乃さんの前に出された座布団に座った。


「もう傷は癒えたか?」


傷、というのはおそらく足抜けしたときの折檻でできたものだろう。


「はい、もう。どなたでありんすか?」


次に彼女は私を不思議そうに見つめて質問してくる。


「妻の郁子だ」

「奥さま……? 今日はあの強欲男の接待じゃあありんせんか?」

「強欲男……。たしかになぁ」


敏正さんが肩を振るわせている。
あの嫌われ者だとかいう政府高官の話だろうか。


「今日は別の者の相手を頼みたい。一橋がそろそろ連れてくるはずだ。まずは、酒と料理を頼むよ」

「わかりんした」


菊乃さんは、新造に指示を出す。


「奥さまを連れてくるとは、わちきへの嫌みでありんすか?」


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