大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
先ほど敏正さんから聞いた話を思い起こすと、菊乃さんの想い人は彼女が自分のために命を落としたと知れば、一緒にと考えるのではないかと思ったのだ。


「その通りだ。俺も郁子が逝ってしまったら、きっと死を想う」


敏正さんの言葉にひどく驚くとともに、なんてありがたいのだろうとも感じた。

それほどの強さで愛されているのだと確認できたからだ。


「菊乃。身請け相手は齢五十を超えているんだろう? 菊乃のほうがきっと長く生きられる。お前に死ぬほどの覚悟があるのなら、自由になれる日を待ってはどうか」


敏正さんの言葉に仰天しつつ、私も同意だ。
その日が訪れるのが、十年先なのか二十年先なのかわからないが、きっとその日はやって来る。


「そんな残酷なことをよくおっせえす。あの人が待っていてくれるとでも言うのでありんすか?」


美しい菊乃さんの眉間に深いシワが刻まれたその瞬間。


「待っているに決まっているだろう」
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