大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
敏正さんが伝えると、菊乃さんは姿勢を正してから深々と頭を下げる。
「ありがとうござりんした。和男さんといつか……いつか幸せになりんす」
震える声を振り絞る菊乃さんの横で、彼女と同じように畳に頭をこすりつける和男さんもまた泣いているのかもしれない。
肩が小刻みに動いていた。
敏正さんに目配せされた私たちは、部屋を退出して妓楼を出る。
敏正さんが〝最初で最後の夜〟を〝最初の夜〟と言い換えた理由がわかった。
ふたりの二度目の夜はずっと遠い先になるかもしれない。
けれども、きっとやってくる。
大門を出たところで、私もほろりと涙がこぼれてしまった。
「郁子」
「申し訳ありません。私、とても偉そうな発言をしてしまいました」
菊乃さんを生かしたい一心だったとはいえ、敏正さんのおかげで火の粉もかからぬ安全な場所にいる私の発言は、傲慢で浅はかだったかもしれない。
「ありがとうござりんした。和男さんといつか……いつか幸せになりんす」
震える声を振り絞る菊乃さんの横で、彼女と同じように畳に頭をこすりつける和男さんもまた泣いているのかもしれない。
肩が小刻みに動いていた。
敏正さんに目配せされた私たちは、部屋を退出して妓楼を出る。
敏正さんが〝最初で最後の夜〟を〝最初の夜〟と言い換えた理由がわかった。
ふたりの二度目の夜はずっと遠い先になるかもしれない。
けれども、きっとやってくる。
大門を出たところで、私もほろりと涙がこぼれてしまった。
「郁子」
「申し訳ありません。私、とても偉そうな発言をしてしまいました」
菊乃さんを生かしたい一心だったとはいえ、敏正さんのおかげで火の粉もかからぬ安全な場所にいる私の発言は、傲慢で浅はかだったかもしれない。