大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「いや、郁子の気持ちはきっと届いている。菊乃は生きるさ。和男くんのために」
「はい」


涙が止まらなくなった私にハンカチーフを差し出した敏正さんは、優しく腰を抱いてくれた。



帰りの自動車の中で、一橋さんが口を開いた。


「和男くんが、敏正さんへの感謝の言葉を何度も口にしていました。背広の手配までと」

「妓楼に擦れた着物を着ていっても入れてもらえんでしょうし。ただ、俺のお古では少し大きすぎたようで」


あれは敏正さんの背広だったのか。


「そうですね。それと、必ず金は返済しますと。でも敏正さん。貸した金では、とても菊乃は買えないような……」

「半分は俺が払っておいたんですよ。全部出してもよかったのですが、それでは和男くんも納得しないと思ったので。郁子、勝手に使ってしまって申し訳ない」

「え?」


突然謝られてわけがわからない。

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