大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
私たちが出会って夫婦となり、強い愛が芽生え、そして肌を重ねられたことすべてに感謝しなくては。

それらどれひとつとしてあたり前にあるものではないとわかった今、与えられた幸運を無駄にしないように必死に生きようと心に誓った。


「なあ、郁子」


窓から差し込んでくる月の光が、彼の端整な顔を浮かび上がらせる。


「はい」
「俺たちは幸せにならないといけない。菊乃と和男くんの分も」


彼も私と同じように、今宵を境にしばし別れのときを過ごさなければならないふたりを想っていたのだとわかった。


「はい。いつかふたりで、菊乃さんたちの再会を見守れたらうれしいですね」
「そうだな」


柔らかな声色で相槌を打つ敏正さんは、私の髪を優しく撫でる。


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