大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「俺は生まれながらに津田紡績という大きな会社のうしろ盾がある幸運に恵まれた。でもそれは偶然だ。もし津田家に生まれていなければ郁子も助けられなかったと思うと、自分の無力さに落胆するよ。だからこそ、今の地位に甘んじることなく、努力を重ねて生きていかねばと思う」

「はい」


たしかに、敏正さんと大門の前ですれ違ったのも奇跡だが、彼が津田家の人間だったことも然り。

彼に三谷家に融資できるほどの財力がなければ、私は菊乃さんのように妓楼にいたはずだ。

様々な幸運に感謝し、これからを精いっぱい生きよう。


これほど立派な志を持つ敏正さんの妻が私でいいのかと不安にもなるけれど、もったいないほどの愛を傾けてもらえるのだから、私は全力でお仕えするのみだ。


「無理をさせたか?」


私の腰をグイッと引く彼は、額に唇を押しつけてくる。


「大丈夫です」
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