大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
敏正さんも春江さんも一橋さんも、皆寛容な人たちばかりだ。


「お待たせしました」


座敷に足を踏み入れると、箱膳の前にあぐらをかいた敏正さんが私に視線を移した。


「よく似合っている。父や母が妹を着せ替え人形のようにして着物を着せるのを楽しんでいたが、その気持ちがわかるね」

「妹さんがいらっしゃるんですね。でも、比べられては困ります」


きっと素敵な方なのだろうに。


「郁子は母に似ている。母もせわしなく働いていないと気が済まない性分だし、おてんばといつも言われていたようだ」


そうなの? 
だから私のようなじゃじゃ馬にも、臆せず接してくれるのかしら?


「座って」
「はい。失礼します」


敏正さんの対面に座ると、春江さんがお茶を淹れてくれた。


箱膳には、牛肉のしぐれ煮、小松菜の胡麻和え、里芋の煮つけと大根の味噌汁が並んでいて、久しぶりのお肉に思わず頬が緩む。

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