大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「またお掃除をされていたんですね」
「あっ、すみません」


私はたすき掛けをしたまま接客していたのに気づき、慌てて外す。


「いえ。頼もしいですよ。少し御髪が乱れていらっしゃるので春江さんに整えてもらいましょう。それで十分です。姉が銀座『千歳(ちとせ)』の大福を好みますので手土産にご用意しました。あっ、こちらは郁子さまにと敏正さまが」


一橋さんは紙袋をふたつ私の前に置く。


「まあ、千歳!」


私もよく通った和菓子店の大福だ。
お母さまもお好きだなんて。

緊張する局面のせいか、こんな些細なことがうれしく感じられる。


「ご存じでしたか。郁子さんが春江さんの分もと絶対におっしゃるからと、敏正さんに用意するように指示されました。一緒に入っていますのでお持たせください」


敏正さん、私の心が読めるの?

もちろん春江さんにも食べていただこうと思っていたので、少しびっくりだ。

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