大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
夫婦になるのだからこれくらいはなんでもないのよ。

私は心の中で自分に言い聞かせながら、彼とともに玄関に足を進めた。


「待ってたわよ。いらっしゃい。おきれいな方ね」


てっきり女中が出てくるかと思いきや、上質な大島紬に身を包んだ女性に迎えられたので驚いた。


「母上。郁子が驚きますから、あまり前のめりになられるのはよしてください」


お母さまが直々に出迎えてくださったの?

大きな目がどことなく敏正さんに似ている。


「前のめりにもなるでしょう? 楽しみで眠れなかったんですもの」

「は、初めまして。三谷郁子と申します。突然お邪魔して申し訳ありません。こちら、よろしければ」


千歳の大福を手渡すと、お母さまの口の端が上がる。


「まぁ、千歳! 久しぶりだわ。あとで一緒に食べましょうね。さぁ、どうぞ」


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