大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
柔らかな声色から一転、厳しい口調に変わったお父さまは、敏正さんの覚悟をうかがうかのように鋭い視線を向けている。


「わかっております」


敏正さんの凛とした返事に、お父さまは満足そうだ。


「幹部たちは私が説き伏せる。三谷商店に関しては、一ノ瀬に手伝わせよう。ただし、お前が責任者として指揮を執るんだ」

「もちろん、そのつもりです」


ふたりの会話を聞いていると、自然と背筋が伸びる。

副社長の一ノ瀬さんの奥さまと母が懇意にしていたというだけなのに、すべてをかけるかのような強い覚悟に戸惑いを隠せない。

もしうまくいかなかったら敏正さんはどうなるの? 
反対している幹部の方々に顔向けできなくなるのではないの? 
それに許可を出したお父さまの立場は?


「あの……。私……」
「郁子さん」


不安のあまり涙目になりながら声をあげると、私を制したのはお母さまだった。


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