五年越しの、君にキス。




ダブルベットが二台置かれた、ホテルの一室。

部屋に入ってシャワーを浴びたあと、当たり前みたいに私と同じほうのベッドに潜り込んできた伊祥を端へと押しやる。


「どうしてこっちで寝るの?あっちが空いてる」

「だったら、あっちに移動する?」

「どうして、一緒に寝ること前提なの?」

「だって今日は梨良の誕生日だし。お祝いに一緒に寝てあげようかなーって」

私の必死の抗議を全て笑顔でスルーして、伊祥が私のほうに擦り寄ってくる。


「誕生日のお祝いなら、さっきしてくれたじゃない。近いってば」

「そう?せっかく五年ぶりに一緒にお祝いできたのに、あれくらいじゃ祝い足りなくない?」

「そんなことない!充分だよ」

「今さら照れなくていいのに」

「照れてない」

横から無遠慮にぎゅっと抱きしめられると、伊祥からシャワーを浴びたあとの石鹸の代わりが漂ってきて。

胸がそわそわ、ドキドキして落ち着かない。

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