五年越しの、君にキス。
私がいないあいだは、冬木さんが居てくれたんじゃないか。
きっと、寝込んでいても何ひとつ不自由はなかったはずだ。
心配して、急いで帰ってきたのに。なんとなく騙された感が否めなくて、複雑な気持ちになる。
「どうもありがとうございました」
帰宅しようとする冬木さんにお礼を言うと、会釈して出て行こうとした彼女がはっと思い出したように足を止めた。
「そうそう。伊祥さんが『夕食は梨良さんにお粥を作ってもらう』と仰っていたので、材料を準備してあります」
伊祥は電話での口約束を冬木さんにまで伝えてたのか。
冬木さんが微笑ましげに私を見てくるから、なんだか妙に恥ずかしい。
「ありがとうございます。確認します」
「それでは失礼します。伊祥さん、お大事になさってくださいね」
顔を赤くしながら頷くと、冬木さんが優しく微笑んで、今度こそ玄関から出て行った。