五年越しの、君にキス。
キスの余韻

私のために新調されたフライパンで、冬木さんに教わった手順通りにオムレツを二つ焼く。

金の縁取りがついた海外ブランドの陶器の皿にオムレツを載せて、冷蔵庫で冷やしていたサラダを盛り付けたところで、伊祥がまだ部屋から出てこないことに気が付いた。

「伊祥、朝ごはんできた」

ドアの外から声をかけながらノックしたら、白の柔らかそうなバスローブを軽く羽織っただけの伊祥がドアの隙間から身体を覗かせた。

「ごめん、シャワーしてた」

タオルで髪を拭きながら、伊祥が少し申し訳なさそうに眉を寄せる。

ふわっと漂ってきた石鹸の香りにドキッとして目線を下げたら、バスローブが軽くはだけた鎖骨と胸元が視界に入ってしまって、動悸が急に激しくなった。

ときどき朝にシャワーを浴びた伊祥が、朝食のときにもバスローブ姿のままふらっと部屋から出てくることがある。

一緒に住み始めてそろそろ二ヶ月が経つけれど、朝から妙な色気を放つ伊祥の姿に慣れない。
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