五年越しの、君にキス。

昔付き合っていたときは、お風呂上がりはちゃんと部屋着で出てきていたはずなのに。いつからこんな習慣がついたんだろう。

目のやり場に困って仕方なく足元に視線を落としていると、伊祥が私の頭の上にぽんと手のひらをのせてきた。

「梨良、先に食べてていいよ」

「時間あるから、待ってる」

「じゃぁ、すぐ行く」

下を向いたままつぶやくと、伊祥の笑う気配がする。

顔をあげたら、伊祥が甘い熱ののった瞳で私を見下ろしているから、私は慌てて部屋のドアを外側からバタンと閉めてしまった。

「とりあえず、早く髪乾かして着替えて。パン焼いとくから!」

「はーい」

ドアの向こう側から微かに聞こえる伊祥の笑い声に息を吐きながら、朝からひどく体力を消耗したような気がした。

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