五年越しの、君にキス。
トーストを焼き、コーヒーを淹れて待っていると、しばらくして仕事用のシャツとパンツに着替えた伊祥が部屋から出てきた。
ネクタイを締めながら食卓の椅子に座った伊祥の前に、オムレツとトーストをのせたお皿と、コーヒーカップを並べる。
そうして私も、二人にしては広すぎる食卓の椅子に伊祥と向き合うようにして座った。
朝食を半分ほど食べ終えたところで、伊祥がふと食事の手を止めて食べかけのオムレツを指差す。
「前から思ってたんだけど、これって冬木さん直伝?」
「そう、だけど……」
「そっか」
朝食は毎日私が作っているけれど、伊祥からこんなふうに質問をされたのは初めてだ。
三分の一ほど口をつけた自分のオムレツに視線を落としながら、私は少し不安になった。
これまで私は、自分がそれなりに料理はできるほうだと思ってきたのだけど……
ここに住み始めばかりのときに、家政婦の冬木さんが伊祥にいつもどんな食事聞いてみて、私の『料理ができる』という彼女のそれが全く別次元のレベルの話だと気が付いた。