五年越しの、君にキス。

この高級ブティックのテナントは、どうやら美藤ホールディングスの持ち物らしく、上客である伊祥がどんな発言をしようが、どんな態度をとろうが、店のスタッフは顔色ひとつ変えず、絶対に営業スマイルを崩さない。

だから、内心でどう思われているのかわからなくて余計に恥ずかしい。

「他の色のドレスをもう少し探してみられますか?」

私たちのやりとりを笑顔で聞いていたスタッフの女性が、私の顔を見ながら話しかけてくる。

「そうですね」

「俺も一緒に選んでいい?」

私が次のドレスを探すために試着台から降りると、伊祥がにこにこと笑いながらソファーから立ち上がった。

何が目的で、何のために何着もドレスを試着させられているのかわからないけれど。

私が選ぶものに文句があるなら、最初から伊祥が決めてくれればいいのに。

ここに連れてこられるまで、伊祥が言っていた「デート」が高級ブティックでの買い物だとは思ってもみなかった。



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