五年越しの、君にキス。

「それより!どうして私はこんなところに連れてこられて、さっきからドレスを選ばされてるの?」

「あー、うん……」

じとっとした目で伊祥を見上げると、彼が私からわざとらしく視線を外しながら言葉を濁す。

「だいたい、目的もわからないままに好きなものを選べって言われたって困る。今選ばされてるこれは、いったい何用なの?」

普段着であるわけがないし、伊祥は何らかの目的があって私をここに連れてきたはずだ。

「何用かって聞かれたら、俺から梨良へのプレゼントかな。ほら、来週は梨良の誕生日でしょ?」

私に視線を戻してにこっと笑いかけてくる、伊祥の表情がものすごく胡散臭い。

確かに、来週の土曜日は私の誕生日だ。特に何か言ったわけでもないのに、誕生日を覚えてくれていたことは嬉しいけど……
 
「もし誕生日プレゼントなら、着る予定のないドレスよりも、もっと実用的なものをもらいたい」

< 76 / 125 >

この作品をシェア

pagetop