五年越しの、君にキス。
何かを誤魔化すような笑顔を浮かべる伊祥をじとーっと見つめ続けていると、しばらくして根負けした伊祥がため息を吐きながらつぶやいた。
「それが、着る予定ができちゃったんだよね。面倒だけど」
「誰かの結婚式でもあるの?」
「結婚式のほうがマシだよ。来週の土曜日の夜、ベリーヒルズビレッジのオフィスビルの重役たちが集まる交流パーティーに呼ばれたんだ」
「交流パーティー?」
「そう。酒飲みながら適当に愛想笑いし続けるだけの、すげーつまんないやつ」
うんざりとした顔でそう言った伊祥が、私から離れて衣装棚のドレスにおもむろに手を伸ばす。
「そういうエラい人たちとの交流は基本的には兄貴たちに任せとけばいいし、面倒だからいつも断ってるんだけど……婚約したなら、一度くらいは梨良を連れてちゃんと交流の場に顔を出せって。親父からの業務命令」
「じゃぁ、私が今選ばされているのはそのパーティー用のドレスってこと?」
「そう」
短くそう答えた伊祥が、面白くなさそうに手にしたドレスの裾をひらひらと動かす。