五年越しの、君にキス。

「そういう事情があるなら、もっと早く教えてくれたらよかったのに。来週なんて、すごく急じゃない」

私のことを誤魔化したままドレスの購入を推し進めようとしていた伊祥は、いったいどのタイミングでパーティーのことを教えてくれるつもりだったんだろう。

企業の重役が集まる交流パーティーなんて、伊祥は行き慣れているかもしれないけれど。そんなものに参加したこともなければ、想像すらつかない私が、軽い気持ちで出席できるようなパーティーじゃないはずだ。

マナーだとか、作法だとかそういう知識も持たずに行っても大丈夫なんだろうか。

「梨良にまだ言いたくなかったのは、まだなんとかして断れないか、画策中だから。だって、来週の土曜日は梨良の誕生日だし。つまんないパーティーに出席してる暇なんてないじゃん?」

「つまんないパーティーって……お父様からの業務命令なんでしょ?」

「だからこうして、出席できる準備だけは整えてる」

私にそう答える伊祥の横顔は、とても不服げだ。

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