五年越しの、君にキス。
お父様に言葉で抵抗する代わりに、伊祥は無言で私の手をぎゅっと握りしめてきた。
その手が熱くて、少しだけ痛い。
「伊祥、私のことは気にせず行ってきて」
私にはよくわからないけれど、このまま立ち去れない大切な用事があるのだろう。
私を背中に隠して動こうとしない伊祥の手をそっと握り返すと、彼が繋いだ手の指先を僅かに震わせた。
肩越しに振り向いた伊祥の瞳が、心許なさそうに私を見つめる。
いつになく不安そうな伊祥の表情に、妙に胸が騒いだ。
伊祥は、パーティー会場に私をひとりで置いておくことが心配なのだろうか。それとも……
ちらっと視線を上げると、伊祥のお父様が厳しい目をして伊祥の動向を窺っている。
今回のパーティーへの参加を伊祥がやけに渋っていたのは、単純に他の企業の重役との交流が面倒だったわけではなく、お父様と済ませなければいけない用事のほうだったのかもしれない。