五年越しの、君にキス。

「ひととおり挨拶は済ませたので、そろそろ失礼しようかと……」

「何言ってるんだ。帰るにはまだ早いだろう」

お父様が歩み寄ってきて、気まずげに竦めた伊祥の肩に手をのせる。それから、伊祥の背中に隠れた私に微笑みかけてきた。

「こんばんは、梨良さん。約束通り、伊祥を連れてきてくれてありがとう。こいつはほっとくと、こういう場に全然出てこないから」

お父様がそう言って、伊祥の肩を力強く数回叩く。

伊祥のお父様にお会いするのはまだ三回目くらいだ。

笑顔の柔らかい、優しい印象の人だけれど、大企業グループの代表取締役なだけあって、独特な風格がある。

「せっかく出てきたんだから、伊祥は少し私に付き合いなさい。梨良さんは、何か飲み物でも頼んで食事をしていればいいよ。オードブルは全て、上のレストランのものだから」

「でも、梨良はこういう場所は慣れてないので」

「慣れてないとは言っても、梨良さんだって子どもじゃないだろう。これから先こういう場に出てもらうことも増えるんだから、いつまでも『慣れてない』じゃ済まされないよ。それに、伊祥には私に付き合ってもらわないといけない大事な用がひとつあるよな」

お父様の話し方は、穏やかだけれどどこか威圧感がある。

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