ドキドキするだけの恋なんて

宇佐美さんに 言われる前から

上原さんのことは タケルに 聞いていたけど。


上原さんは ガツガツしてなくて。

時々 電話で話すように なっていたけど。


いつも 穏やかな口調で。

私を 追い詰めるようなことは 言わなかった。



「こんばんは。今 大丈夫?」

「はい。もう 家だから。」


「へぇ。早いね。あず美ちゃん 寄道とか しないの?」

「1人では しないかな。同期の友達と 食事することは あるけど。」

「じゃ 普段は 自炊してるの?」

「ほとんど コンビニかな。1人だと 作る気 しなくて…」


「ハハッ。そうだよね。俺も 同じ。だから たまに 外食して 栄養補給するんだ。」

「栄養補給とか 言って… 体に良い物 食べてます?」

「うーん… 肉ばっかり。」

「フフフッ。駄目でしょう?」


「そうだね?じゃあさ。あず美ちゃん 一緒に食べようか? 体に良さそうな 食事。」

「フフッ。いいですよ? 野菜たっぷりの 健康食。」


すごく自然に 食事に誘われて。

私は 何も構えずに 約束していた。


芙由子や 宇佐美さんが 言っていたように

私は 憶病に なり過ぎていたかもしれない。


もっと 気軽に……


出会いを 大切にしようって。

私の気持ちが 変わっていたから。


そうしないと いつまでも 前に進めない。


タケルのことも 含めて。


考えてばかりで 動かない自分に

私は もう うんざりしていたから。






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