あなたの左手、 私の右手。
ハンドルを握る先輩をこっそりと見つめながら私は確信した。

私、先輩のことが好きだ・・・。


「お前、今ぐるぐるといろいろ考えてるやろ。考えてないで眠れ。」
何だって先輩にはお見通しだ。

運転しながらそっと左手を私の方に近づけた先輩が私の膝にかかる自分の上着をグイっとあげて私の顔の上にかけた。

「いいから眠れ。」

その言葉にまるで魔法でもかけられていたかのように私は眠りに落ちた。
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