あなたの左手、 私の右手。
「大丈夫か?ほら。かせ。」
私からおかゆの入ったお椀を預かり、先輩は私の背中をさすってから、一口分をレンゲにすくい、ふーふーと冷ましてくれる。
急に恥ずかしくなって、思わず視線をそらそうとする私の口に「ほら」と先輩は少し嬉しそうにおかゆを入れた。

「おいひい!」
そう声をあげる私にふっと笑う。
「赤名がおいしいって食べるもんはなんだっておいしそうに見えるな。」
「そうですか?」
次の一口をさまして私の口におかゆを再び運んだ先輩が嬉しそうに私を微笑んだまま見つめる。
「お前のおいしいって何かを食べてる時の表情見てると俺まで幸せな気持ちになれるわ。」
嬉しくも恥ずかしくもあるその言葉に、曖昧に微笑みで返す私。

「また俺、困らせとるな。でも、言いたいことは俺言うからな。容赦なしに。すまんな。」
急に甘くなった先輩。そしてまっすぐな言葉をくれる先輩。

私も急に何か返したくなる。
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