子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
玄関がガチャリとなったのは、22時半を過ぎたところだった。思っていたより早いことに、少しだけホッとした。

ボーッと眺めていただけのテレビを消して、リビングの入り口へ向かう。

「おかえりなさい」

「紬、座っていていいのに。ただいま」

挨拶より先に、お小言のような言葉を言われてしまった。こんなの、いつものこと。これまでだったら、私を思いやっての一言だと感じていたことだ。

けれど、今は素直に受け取れない。煩わしく思われてるのかもと考えてしまう。

「ご、ごめんなさい」

「いや。謝らなくていいから。紬、ほら」

手渡された紙箱には、プリンが入っていた。

「それ、有名らしいよ」

知ってる。最近テレビで紹介されたとかで、なかなか買えないって言ってた。

「ありがとう」

なんとか笑みを浮かべてみせた。
途端に、ふんわりと抱きしめられるのは、いつものこと。

けれどその瞬間、体が硬直した。

「紬?」

今夜は、ボディーソープの香りはしなかった。

だけど……
今感じたのは、おそらく女性ものの香水。

「うっ……」

突然吐き気に襲われて、一目散にトイレへ駆け込んだ。

「紬?大丈夫か?」

心配する柊也さんを振り払って、急いで個室に籠る。




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