子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「じゃ、じゃあ、本命の人は……」

そう言いかけたら、がばりと体を離されてしまった。幸せな温かさを急に奪われたようで、途端に不安になってしまう。

「それだけどなあ、そんな相手なんていないからな」

眉間に皺を寄せながら、信じて欲しいというように視線を合わせてくる。

「だって……」

それ以上、何も言わせないっていう様子で、私の唇に人差し指をあてた。

「まず、うちに入社してきたっていう女だけど、あいつは……由希っていうんだけど、過去も現在も恋愛関係なったことは一度だってない。もちろん、遊びの関係なんてもってのほかだ」

きっぱり言い切ってるけど……
でも、山岸さんの話によると、かなり親しそうだったらしいし。それに、名前で呼んでるんだ……

「昔からの知り合いなんだ。実家が近くてな。
あいつの両親は、朝から晩まで仕事で忙しくしてて、娘のことなんてお金だけ与えて放置してた。ネグレクトになるんだろうなあ」

ネグレクト……

「そんな環境だったから、あいつ、寂しさを紛らわせたかったんだろうな。ろくでもない男に、ホイホイついていってしまうようになって。気が付いた時は助けてやってたんだ。妹みたいなもんなんだよ」

自分の子ども時代も、決して幸せだとは思ってなかったけど、放置されるのもまた不幸せなことなのかもしれない。



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